イタリアの空気と歴史をを感じたいなら「愛の年代記」その感想

塩野七生さんと言えば、イタリア在住の小説家です。

多くのイタリアの歴史に関する本を書いています。

単に歴史だけでなく、その中で行きた人間の感情さえも蘇らせるような文体で、あたかも読者がいまイタリアにいるような錯覚さえ覚えることもあります。

その著書の中でもこの「愛の年代記」はその昔のイタリア人の、愛と人生をモチーフにした短編集なのです。

愛に生きた人々の物語

もともとイタリア人というのは、愛というものは人生の花、会って当然のものという人種でもあります。

そして昔のイタリア人、ルネッサンス期のイタリア人やその昔の人々は、愛を歌い上げることに関してのプロと言ってもいいでしょう。

そんなイタリアの、日本ではあまり知られていない過去の人々の愛と人生を淡々と描いているのが、この短編集「愛の年代記」なのです。

女性も男性も愛と無縁でいられなかった

愛は残酷なものでもあり、また美しいものでもあります。

特にイタリアのような、愛を生活と人生の中心においた国民の場合、そこに起きるドラマは傍から見ても美しく、また残酷でもあるのです。

作者の塩野七生さんの筆致は、特に華々しい文章ではありません。

どちらかと言えば、クールで淡々とした感じで物語を進めていきます。

しかしその文章からは、イタリアの空気や匂いが立ち上ってくるのが不思議なくらいです。

ルネッサンスなどの昔のイタリアの光景や匂いまで感じられる、不思議な文章で物語りは書き綴られています。

特に光景がはっきりしすぎて

各短編の愛の物語は、美しいだけではありません。

時にその愛のせいでの、残酷な光景も繰り広げられます。

塩野さんの筆は、非常に落ち着いたままその残酷な描写も描いていきます。

牢獄のかびた匂いや、湿った空気まで感じられるほどです。

文章が淡々としているだけに、読み飛ばしてしまう人もいるでしょうが、逆に感情移入しすぎてそれが目に浮かんでしまう人もいるに違いありません。

物語に溶け込むことができる人の場合、そのあたり注意が必要かもしれません。

まとめ

非常に楽しめる、でも時に読んでいて登場人物に共感しすぎることもある、そんな小説です。

イタリアという国に住む人間の大きな愛と、そのために残酷にもなれる心を描いた小説です。

短編なので読みやすく、またこの小説で登場人物に興味が湧いた場合、その人物について突き詰めて調べるという楽しみ方も出来ます。

またちょっと頭の中で、そうした登場人物についての空想を描くことも可能です。

短編として完成度の高い小説ですが、その先の楽しみへの牽引もしてくれる1冊なのです。